拝啓、元婚約者様 捨てた私のことはお構いなく
「どうして薬が入っているとわかったのですか?」

 フィーヌはおずおずとホークに尋ねる。

「わかっていたわけではない。かまをかけただけだ。あの男達からは俺に対する悪意が見えたから、何かしら企んでいるのは予想が付いた」
「悪意……」

(そういえば、ホーク様の神経は『魔眼』だったわね)

 どうやって見えるのかは詳しく知らないが、その能力のひとつに人の悪意が見えるというのは知っている。

「先ほどきみが対峙した令嬢達といい、まるで子供みたいな嫌がらせだな」
「本当にそうですね。多分、精神年齢が子供なんです。彼らを成敗する閣下はまるで死神みたいでした。あ、褒めてますよ」

 さきほど悪女と言われた仕返しに、フィーヌは軽口を叩く。
 すると、ホークは一瞬虚を衝かれたような顔をしてから、耐え切れない様子で噴き出す。
 
「死神と悪女か。なかなかいい組み合わせだな」
「よくありません。極悪夫婦みたいです」
「極悪夫婦か。ははっ」

 楽しげに肩を揺らして笑い出したホークを見て、フィーヌは肩を竦める。

「もう義理は果たしただろう。帰ろうか」
「主役のおふたりにお祝いのご挨拶をしていませんわ」
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