拝啓、元婚約者様 捨てた私のことはお構いなく
(無関係だと主張しろと伝えたのに)

 なんとも馬鹿正直な対応だが、嫌な気はしなかった。
 少なくとも、ホークはひとりだけ保身することなくフィーヌを庇おうとしているのだ。
 
 すると、バナージは「ふんっ」と鼻で笑った。

「浮気現場に乗り込まれた人間は皆、誤解だと弁解する。貴殿の言うことを信じる者がいるとでも?」
「信じる者がいるかも何も、信じてもらうしかない」
「話にならないな」

 バナージが吐き捨てるように言うと、ホークが身に纏う空気がぐっと冷えた。

「むしろ、婚約者がありながら他の令嬢にそのように寄り添う貴殿の態度に問題があるとは思わないのか?」

 ホークの言葉遣いは丁寧だが、怒りを抑えているのがひしひしと伝わってきた。
 しかし、バナージはさらにホークを逆なでするような態度を取る。
 
「生憎、フィーヌは寄り添う価値のないふしだらな女だとわかったんでね。ロサイダー卿、あなたはご自分の婚約者が自分以外の男とふたりで密室に籠ってこそこそと何かをしていても、何もないと全面的に信じるのか? 大した心の広さだ」

 バナージは話にならないとでも言いたげに、両肘を曲げて手のひらを天井に向ける。
 その態度で、フィーヌはピンときた。

(もしかして、わざと怒らせようとしている?)

 バナージの態度はそうとしか思えなかった。
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