拝啓、元婚約者様 捨てた私のことはお構いなく
 謁見室を退室したホークは、口元に弧を描いた。

 
   ◇ ◇ ◇


 ホークが王宮にいたその頃、フィーヌは城下にあるとある商会を訪ねていた。

「お嬢様。お久しぶりでございます。お元気そうでなによりでございます」
「ええ、ありがとう。本当にお久しぶりですね、ロバート」

 フィーヌは久しぶりに会うロバート──ダイナー公爵家の金鉱山事業責任者を見つめ、目を細めた。
 かつては数か月おきに顔を合わせていたけれど、ロサイダー領に嫁いでからは一度も会っていない。半年ぶりに会う彼は、少し痩せて頬がこけたように見えた。

「少し痩せたのではなくて? きちんと食べているの?」
「はい。食べております。ただ、最近仕事が忙しく──」

 ロバートは口ごもる。
 その様子からは、彼が疲弊しきっていることが見て取れた。

「一体何があったのか、話してくれない?」
「それは……」

 ロバートは口ごもる。
 既にバナージの婚約者でも何でもない存在になったフィーヌに内情を話すのはためらわれたのだろう。

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