拝啓、元婚約者様 捨てた私のことはお構いなく
 それに、ロバートが恩義を感じているのはダイナー公爵であって、バナージではない。長く病床に伏しているダイナー公爵に万が一のことがあったら、彼はこのままここに留まり続けるだろうか。

 遅効性の毒はゆっくりと回り、体を蝕んでゆく。
 気づいたときにはもう、取り返しがつかないのだ。


  ◇ ◇ ◇

 王都に滞在する最終日、フィーヌとホークは一緒に出掛けることにした。
 王都には滅多に来ないので、せっかくなので町散策をしようと思ったのだ。フィーヌは長年通いなれた大通りを、ホークに案内する。

 ふと、大通り沿いにある雑貨屋に置かれたハンカチが目に留まった。

「これ、可愛いですね」

 フィーヌが手に取ったのは、様々なお花のワンポイント刺繍が入ったハンカチだった。ひまわりやバラ、パンジーもある。

「屋敷にいる使用人達にお土産に買ってきてもいいですか?」
「もちろん」

 ホークが頷くと、フィーヌは十枚ハンカチを選ぶ。

「ずいぶんたくさん買うのだな」
「はい。皆がどの柄が好きかわからないので、全種類買おうと思います。余ったものはわたくしが使えばいいので」

 フィーヌは笑顔で頷く。
< 114 / 193 >

この作品をシェア

pagetop