拝啓、元婚約者様 捨てた私のことはお構いなく
 ホークが今日、朝から会議だらけであることはフィーヌも知っていた。だって、調べておいたから。
 
 ホークは肩を竦めると、そのそとベッドから起き上がる。目覚めのよい彼はてきぱきと朝の準備を終わらせてしまった。

「フィーヌはゆっくり準備するといい。また今夜」
「あっ」

 フィーヌは思わず声を漏らす。すると、部屋から出ていこうとしていたホークが振り返った。

「どうした?」
「あの……」

 フィーヌは言葉を詰まらせる。
 今日はフィーヌがここに来て三年、つまり、ホークとの誓約の期限だ。
 つまり、この屋敷を出ていこうとしているフィーヌが彼と言葉を交わすのはこれが最後になるだろう。

 フィーヌはベッドから下りて立ち上がると、ホークのそばに駆け寄る。

「いってらっしゃい」

 背伸びをするとホークに触れるだけのキスをする。
 ホークは少し驚いたような顔をしたが、すぐにフィーヌの後頭部に手をまわす。

「朝から随分と情熱的だな?」
「たまにはいいでしょう?」
「いつでも大歓迎だ」

 ホークはフッと笑う。
 今度こそ寝室から出て行ったホークの後ろ姿をフィーヌは笑顔で見送った。

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