拝啓、元婚約者様 捨てた私のことはお構いなく
 文官は丁寧に頭を下げてから、部屋を出て行く。すると、すぐにまた別の文官が入ってきた。

「閣下がご依頼されておりました指輪が完成したそうです」

 文官の後ろには、貴金属店の店主がいた。
 
「見せてくれ」
「こちらです」
 
 ホークが差し出した手に、店主は持っていた小箱を乗せる。ふたを開けると、ダイヤモンドが複数使われた美しい指輪が入っていた。

「想像以上の出来栄えだ」
「気に入っていただけて何よりです」

 店主は褒められて嬉しそうにはにかむ。

「最上級のダイヤモンドを使用しております。この世にふたつとない逸品に仕上がったかと」
「そうか。ありがとう。いい仕事をしてくれて感謝する」
「ありがたいお言葉でございます」
 
 店主はお辞儀をすると、部屋を出ていった。
 ホークは改めて指輪を眺める。

(フィーヌは喜んでくれるだろうか)

 今日で約束の二年が終わる。
 結婚した日に誓約を申し出てきたときから、フィーヌが二年経てば離縁を申し出るつもりであることには気付いていた。
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