拝啓、元婚約者様 捨てた私のことはお構いなく
 しかし、フィーヌのことを知れば知るほど彼女に惹かれる自分を抑えることはできず、手放すことなど到底無理だ。

 だから今夜、ホークは彼女にもう一度プロポーズしようと思っていた。
 自惚れでなければフィーヌも自分を愛してくれているはずだ。

 そのときだ。どんどんとドアを叩く音がした。
 ホークはハッとして、指輪を入れている小箱を閉めるとそれをポケットにしまう。

「何事だ?」
「旦那様、アンナでございます」

 ドアを開けると、そこには真っ青な顔をしたアンナが立っていた。
 
「そんなに慌てて何があった?」
「奥さまが……」
「フィーヌがどうかしたのか?」
「奥さまがいなくなりました!」

 ホークは眉根を寄せる。

「いなくなったとは、どういう意味だ? 散歩でもしているわけではなくて?」

 アンナの様子からそういうことではないと察したが、ホークは自分を落ち着かせるために努めて平静を装って聞き返す。

「それが、こんなものが……」

 アンナが震える手で差し出した封筒をホークは受け取る。そこには、美しい文字で「ホーク様へ」と書かれていた。
 間違いなく、フィーヌの文字だった。
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