拝啓、元婚約者様 捨てた私のことはお構いなく
 見間違えるはずはない。彼女が作った書類や資料に何十回、何百回と目を通したのだから。

 ホークは焦る気持ちを必死に抑え、封筒を開く。

ーーー
 
 ホーク様

 あなたと過ごした二年間、とても幸せでした。
 こんなわたくしを大切にしてくださったこと、本当に感謝しております。
 これからはどうか、愛する人との時間をお過ごしください。
 遠く離れても、あなたの幸せを祈っております。
 ロサイダー領に恵みの大地が広がりますように。

 フィーヌ

 ーーーー
 
 
 手紙には離縁申請書が同封されていた。
 フィーヌの欄には既にサインが入っており、あとはホークがサインして提出するだけの状態のものだ。

「愛する人だと?」
 
 ホークはその離縁申請書をぐしゃりと握りつぶす。

「俺が愛しているのはきみだけなのに、どういうつもりだ?」

 ホークは自分の腕に刻まれたフィーヌとの誓約の紋章を見る。

(今のところ、異常はない……)
 
 誓約はどちらかが破ればそこで効力を失い、破った側には呪いが降りかかる。
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