拝啓、元婚約者様 捨てた私のことはお構いなく
 約束の二年の最終日、つまり今日の夜までは効力があるはずなのに呪いが発動していないということは、フィーヌは裏切ったわけではなく真心からこの馬鹿げた行為をしたということだ。

(まさか俺に愛人がいると思い込んで、自分から身を引いたのか?)
  
 とにかく、フィーヌがなにか重大な勘違いをしていることは理解した。

「旦那様。どうしましょう……」

 おろおろしたアンナは震える声でホークに問いかける。

「無論、追いかけて連れ戻す。アンナは引き続き、屋敷の中にフィーヌがいないか探してくれ」
「かしこまりました」

 アンナはこくこくと頷くと、すぐに思い当たる場所を再度確認に行く。

 部屋にひとりになったホークは、天井を仰ぐ。

(まさか、何も言わずに出て行くとは)

 最初から最後まで、予想を超える行動をしてくる。
 
(だが、ロサイダー家の家訓は『敵は徹底的に叩き潰せ。望むものは手段を選ばず奪い取れ』だ。そしてフィーヌ。今俺が心から欲しているのは、お前自身だ)

 あらゆる手段を使ってでも捜し出して見せる。
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