拝啓、元婚約者様 捨てた私のことはお構いなく
 そう決意したホークはすぐに、カールを始めとする特に信頼のおける部下達を呼び出した。

「フィーヌがいなくなった」

 ホークの言葉に、その場に集まった部下達は皆凍り付く。
 
「すぐに探しに行く。女ひとり、馬もなしにいける範囲は限られる」
「はい」

 部下達は一斉に返事すると、各々が周辺地域を探しに行く。ホーク自身もフィーヌを探しに町に出た。

 すぐに見つかると思っていたのになかなか見つからないことに、だんだんと焦りが募る。

(まさか、誰かに連れ去られたんじゃ……)

 嫌な想像が頭をよぎり、背筋が冷たくなる。
 そのとき、ふと通りを横切る子供の姿が目に入った。足を怪我しているのか、膝にハンカチを巻いている。
 刺繍されたそのハンカチに見覚えがあり、ホークははっとする。

「おいっ!」

 突然声をかけられた子供はホークを見てびくっと肩を震わせた。

「そのハンカチは誰に貰った?」

 サクランボの刺繍がされたハンカチは、フィーヌのものだ。
 
「親切なお姉ちゃんにもらった。転んだら、助けてくれたの」
「いつ、どこでだ?」
「今日のお昼ごろ、噴水広場の前だよ」
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