拝啓、元婚約者様 捨てた私のことはお構いなく
「噴水広場だと?」

 噴水広場は名前の通り、噴水の周りにある広場のことで、ロサイダー領の人々の憩いの場になっている。

(噴水広場は確か──)

 そこまで考えたときに「閣下!」と呼び声がした。

「奥様らしき目撃証言が得られました。今日の十一時頃、長距離馬車乗り場でひとりで待っている姿を見たと」
「今日の昼頃出発した路線を調べてくれ」
「はい、すぐに」

 部下は慌てて確認に向かう。
 その後ろ姿を見つめ、ホークはぎゅっとこぶしを握った。
 
 噴水広場は長距離バスの発着所になっており、各地とロサイダー領を結んでいる。その馬車に乗ったのであれば、もしかするともうロサイダー領にはいない可能性もある。

(フィーヌ。どこにいる?) 

 ホークはフィーヌを思い、天を仰いだ。

   ◇ ◇ ◇

【ヴィラ歴423年5月】
 
 地面から湧きだす水に手を当てると、人肌より少し暖かい。

「うん。今日もいいお湯だわ」

 フィーヌは笑みを浮かべる。
 
「ヴァル、もう少し湯量を増やせる?」
「お安いごようだぞ」

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