拝啓、元婚約者様 捨てた私のことはお構いなく
 フィーヌは靴を脱ぐと、足首まで水に浸かる。だいぶ気温は上がってきたが、水はまだ冷たかった。
 
 前を向くと空は夕焼けで赤くなり、湖面まで同じ色に染まっている。

「綺麗ね」

 フィーヌはぽつりと呟く。
 そのとき、背後から地面を踏みしめる音がした。

「そうだな。まるできみの美しい髪のような空だ」

 ハッとしてフィーヌは振り返る。

「閣下……」

 そこには、軍服姿のホークがいた。

「なんでここに……」
「きみを探しに来た」
「わたくしを?」

 フィーヌは困惑する。すると、ホークに強く抱きしめられた。
  
「俺を置いて、どこにも行くな。フィーヌは、俺の妻だろう?」
「なんで? せっかく離縁しようと思って、準備したのに。愛している人は?」
「何を勘違いしたのかわからないが、俺が愛しているのはフィーヌだけだ。それに、フィーヌも俺を愛してる。違うのか?」

 耳元で囁かれ、感情が溢れだす。
 好きだった。だけど、ホークには別に女性がいると思ってずっと蓋をしてきた。

「あなたのことが、ずっと好きだったわ。大好きよ」

 ボロボロと涙が溢れてくる。
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