拝啓、元婚約者様 捨てた私のことはお構いなく
 ホークはフィーヌの両頬を手で包み、彼女に微笑みかける。

「いい子だ。俺のところに戻ってこい」

 ふたりの顔が近づき、唇が重なった。
 

 その日の晩、フィーヌは久しぶりにホークと向き合って話をした。
 
「ええーっ!」

 宿屋の一室に、大きな声が響く。

「シェリーって、馬の名前なのですか?」

 フィーヌは思ってもみなかった事実に驚いた。ずっと、女性の名前だと思っていたのに。

「ああ。シェリーは長年俺が相棒にしていた牝馬だ。最近妊娠したから、今は別の雄馬に乗っているが」
「そんな──」

 フィーヌは呆然とする。

(え? じゃあ、わたくしって二年間も馬を愛人だと思っていたってこと?)

 おかしいと思うタイミングは何度もあった。
 愛人がいるのにもかかわらずホークは毎晩フィーヌを抱き寄せて寝ていたし、日中どこかで逢瀬を重ねているようにも見えなかった。だから、一体いつ会っているのかといつも不思議だったのだ。

 けれど、完全にシェリーを人間の女性だと思い込んでいたフィーヌはふたりが別れたという確証も持てず、今日までホークを疑ったままでいた。

「厨房のシェリーさんは?」
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