拝啓、元婚約者様 捨てた私のことはお構いなく
「なんだと! このっ」

 殴られる。そう思った瞬間、バナージの腕をホークが掴んだ。

「女性に手を上げようとするとは、紳士の風上にも置けないな」
「なっ! 離せ!」

 バナージは驚いたように目を見開き、ホークの手を振り払う。

「フィーヌを庇おうとすること自体が、ロサイダー卿とフィーヌがただならぬ関係であることの証拠のようなものだ」
「なるほど。貴公の考えはよくわかった。話が通じないようだから、俺も失礼するとしよう。ひとつ不思議なのは、お前たちからは部屋を開ける前から我々への悪意が感じ取れたことだな」

 バナージはぐっと言葉に詰まったが、すぐにふんと鼻で笑う。

「例の神恵で見えたとでもいうのか? なんとでも言える、お気楽でご都合主義な神恵で羨ましい限りだ」
 
(ロサイダー卿の神恵ってなんなのかしら?)
 
 フィーヌは不思議に思う。
 一方のホークはぎろりとバナージを睨み付け、部屋の出口に向かって彼らの横を通り過ぎた。

「やだ、怖ーい」
「大丈夫だ。俺がいる」

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