拝啓、元婚約者様 捨てた私のことはお構いなく
「はあ? わたくしに『俺と結婚したら一生何ひとつ不自由せずに生きていける』って言ったのはどこの誰よ? 約束を破る気?」
「あのときはまだリリト金山の採掘量も多かったし、何年も連続して豊作が続いていた! 今は違うだろう!」
「そんなの、わたくしのせいじゃないもの。領主はあなたなんだから、あなたがなんとかすべきでしょう!」

 不機嫌を露わにしたバナージに、レイナも負けじと言い返す。

「何よ、甲斐性なし!」

 レイナはヒステリックに叫ぶと、バタンとドアを閉じて出て行った。

「ああ、くそっ!」

 バナージは頭を掻きむしる。
 本当に、なにもかもが上手くいかない。

(こんなはずじゃなかった。どうすれば……)

 事業がうまくいっていたときに重用していた人材はバナージのすようとすることにいちいち諫言してきたので、煩わしく思ってほとんどを解雇してしまっていた。呼び戻せば上手くいくだろうかと考え、ふと脳裏に父の代からダイナー公爵家の鉱山開発の管理人をしていた男が言った言葉がよぎる。

『そうは言われましても、金鉱脈はフィーヌ様が神恵で──』

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