拝啓、元婚約者様 捨てた私のことはお構いなく
 けれど、愛されているからこそだと思えば不快感は一切なかった。
 
 そのとき、ノックする音がしてカチャッとドアが開く。
 どきっとしたフィーヌが慌てて手を引くのと同時に入ってきたのは、アンナだった。

「奥様。本日届いたお手紙はこちらに置いておきますね」
「ありがとう。……どなたから届いているか教えてくれる?」 
「もちろんです。えーっと、これはポンパドール夫人、次はミエル夫人……」

 アンナは手紙の差出人を順番に読み上げていく。

「あとこれは……ダイナー公爵ですね」
「ダイナー公爵?」

 フィーヌはハッとして聞き返す。
 ダイナー公爵家は代替わりしており、今の当主はバナージだ。

「なんの用だか知らないが、今になってぬけぬけと手紙をよこすとは、ダイナー公爵はなかなか肝が据わった男のようだな」

 すぐ横から冷ややかな声が聞こえ、部屋の空気がスーッと冷たくなるのを感じた。
 丁寧な口調だが、ホークの様子から彼が相当不愉快に思っていることをフィーヌは敏感に感じ取った。

(一体なんの用?)
 
 フィーヌは困惑気味に封筒を見つめた。
 
「今、読んでみても構いませんか?」
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