拝啓、元婚約者様 捨てた私のことはお構いなく
「無論だ」

 ホークが頷いたので、フィーヌは目配せしてアンナを下がらせる。
 封を切ると、中には便箋が入っていた。

ーーーー
 
フィーヌへ

久しぶりだが、元気にしているだろうか。
日々の政務や執務の合間、ふと婚約者だったころのきみの姿が脳裏をよぎることがあるよ。

俺の方はというと、相変わらず多忙な毎日だ。公爵家の当主として采配を振るう以上、当然といえば当然のことだ。
事業もまた試練という名の風にさらされ、真に価値ある者だけがその中に立ち続けることを許される。まあ、簡単に言えば、いま一度、己の力を試されている時期とでも言おうか。

こうした時こそ、周囲の人間の価値が問われるものだ。
この機会に、きみの価値を周囲に知らしめるチャンスを与えたいと思っている。ダイナー公爵家と手を組めるのは、ロサイダー辺境伯家にとっても悪くはあるまい。

ちょうど良い機会だ、久々に顔を合わせて話すのはどうだろう? 
何も堅苦しい場でなくとも、昔のように自然な時間を共にすれば、レイナもきっと喜ぶのではないかと思っている。

俺の望む答えをわかっているはずだ。期待している。

バナージ・ダイナー

< 152 / 193 >

この作品をシェア

pagetop