拝啓、元婚約者様 捨てた私のことはお構いなく
 そこからは、これまでどんなに試掘しても新しい金鉱脈に辿り着けなかったのが嘘のように、万事がうまくいった。バナージは屋敷で美酒を飲みながら、事業の復興に酔いしれる。

「ねえ、バナージ。マダムシンシアでドレスを買いたいの。いいでしょう?」

 甘えたようにまとわりついてくるのはレイナだ。

「ああ、好きにしろ」
「あと、ドレスに合わせて宝石と靴も新調したいのだけど──」
「いくらでも買うといい」

 バナージはふたつ返事で了承する。ナルト金山があれば金はいかようにもできる。

 「やった。ありがとう、バナージ」

 レイナはバナージの首に両手を回すと、体を摺り寄せる。バナージはそんなレイナを片手でぐいっと押しのけた。

「ちょっと、何よ」
「酒が零れるだろ」

 レイナは不服そうに、ぷくっと頬を膨らませる。
 
 その様子を見て、ダイナーは内心でため息を吐いた。
 以前は可愛いと思えたレイナが段々と見た目ばかりを気にする頭が空っぽの女に見えてきたのはいつからだろう。

「それよりもレイナ。近く、フィーヌ達をここに招待しようと思う」
「お姉様を? どうして?」
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