拝啓、元婚約者様 捨てた私のことはお構いなく
 彼女の姿が完全に見えなくなったことを確認してから、フィーヌは花壇に向かって「ヴァル!」と呼びかけた。
 
「ヴァルのおかげ植物がよく育つって、みんな感謝しているわ。ありがとう、ヴァル」

 すると、咲き誇る花の隙間からひょこっとヴァルが顔を出した。
 ヴァルは土の精霊なので、土があるところであればどこでも現れることができるのだ。
 
「オイラのおかげ?」
「ええ、そうよ。本当にみんな、感謝しているの」
「そっか。へへっ」
 
 ヴァルは嬉しそうに頬を掻く。
 その様子を見ていたら、フィーヌまで嬉しくなった。

「そういえば、フィーヌに聞かれて教えてやったナルト金山だけど、採掘が本格的に始まったみたいだぞ」
「そう。よかったわ」
「オイラは全然よくないぞ。なんであんなやつ助けるんだよ」

 ヴァルは不満げに腰に手を当てる。
 ヴァルはバナージのことを昔から嫌っているので、フィーヌが彼を手助けしたことが気に入らないのだろう。

「下準備をしているのよ」
「下準備?」
「ええ、そうよ。わたくしに散々無礼を働いたから、ちょっと懲らしめてあげようと思って」
< 163 / 193 >

この作品をシェア

pagetop