拝啓、元婚約者様 捨てた私のことはお構いなく
「へえ、そりゃいい考えだ。何をするのか、オイラも聞いても?」
「もちろんよ。ヴァルがいないとできないもの」

 フィーヌはにこっと笑う。
 そのとき、日傘を取りに行っていたアンナが戻ってきた。

「お待たせいたしました」
「ううん、大丈夫よ。ありがとう」
「どういたしまして。あ、あと、本日の郵便物が届いておりました」
「どこから来ていたかは覚えている?」
「ダイナー公爵家からです」

 フィーヌはそれを聞き、ぴくっと動きを止める。

(かかったわね)

 一度助ければ、バナージは必ずまたフィーヌの力を利用しようとするはずだ。
 自分達が優位にいると思い込んでいるそのときほど、人を陥れやすいときはない。

「そろそろ戻るわ」
「え? もうですか? せっかく日傘をお持ちしたのに」
「ええ、ごめんなさい。喉が渇いてしまって」

 フィーヌは申し訳なさげに微笑む。
 今は花よりも、その手紙を読むほうが先だ。

 
 その日の晩、フィーヌは届いた手紙を持ってホークの部屋を訪ねた。

「飲むか?」

 サイドボードの前に立つホークが手に持っているのは、今年採れた果実で作られた果実酒だ。
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