拝啓、元婚約者様 捨てた私のことはお構いなく
 フィーヌはハッとしてホークを見返す。
 ホークが魔眼の神恵を持っていることは、本当の夫婦になった頃に彼から聞いた。きっと、彼にはレイナの悪意が見えているのだろう。

(何か仕掛けてくるってことね)

 フィーヌは了承の意を込めて、小さく頷いた。

 
 レイナに案内されたのは、彼女の私室だった。広々とした豪奢な部屋は、ダイナー公爵家の女主人が使う部屋だ。

「久しぶりに訪問した、ダイナー公爵家はどう? 懐かしいんじゃない?」
「そうでもないわ」
「……っあ、ごめんなさい。お姉様はこの部屋に入ったことがないはずなんだから、懐かしいわけないわよね」

 レイナはフィーヌをちらっと見つめ、さも申し訳なさそうな顔をしてみせる。
 
「お姉様も知っての通り、先代のダイナー公爵が亡くなってバナージ様が当主になられたから、わたくしがここの女主人をしているの。広すぎてただでさえ管理が大変なのに、いろんな家門の方がひっきりなしに訪ねてきて大忙しだわ」

 レイナは困ったように眉尻を下げ、ふうっと息を吐く。

< 174 / 193 >

この作品をシェア

pagetop