拝啓、元婚約者様 捨てた私のことはお構いなく
「その点、ロサイダー領でよかったわね。地理的に、貴族同士のお付き合いなんてないのでしょう? 羨ましいわ」

(さっきから、マウント取った気にでもなっているのかしら?)

 正直言って全く羨ましいとは思わないが、おだてておくのがいいのだろうとフィーヌは判断した。
 
「公爵夫人って大変なのね」
「まあ、そこまででもないけど。音楽を聞きに行ったり、お茶会に行ったりして息抜きをしているわ。お姉様は息抜きするとき、どんなところに行くの?」
「最近は乗馬を教えてもらったから、馬を走らせて散歩をしているわ」
「馬を走らせて散歩? さすがは辺境伯夫人ね。随分と個性的だわ」

 どこかバカにしたような声色で、レイナは相槌を打つ。
 そうこうするうちに、ドアがノックされてメイドが入ってきた。

「お飲み物とおつまみをお持ちしました」

 メイドが運んできたティーカップをフィーヌとレイナの前に置く。

(ポットじゃなくてカップで出すなんて珍しいわね)

 ちらっとメイドの顔を見ると、目が合った瞬間に彼女はびくっとした様子を見せて、フィーヌから目を逸らした。

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