拝啓、元婚約者様 捨てた私のことはお構いなく
(わかりやすい子ね。何か入っているのかしら?)

 レイナもしくはバナージに命令されてやっているのだろう。
 さすがに毒ということはないだろうから、睡眠薬か媚薬のたぐいでフィーヌの不貞でもでっち上げようとしているのだろうか。

 メイドが出て行ったのを見計らい、フィーヌは紅茶と一緒に出された菓子に添えられたフォークを、わざと手に当てて床に落とした。

「あっ」

 フィーヌは声を上げる。カランコロンと音を立ててフォークが転がる。
 
「ごめんなさい。新しいものをいただいていい?」
「もう、仕方がないわね。本当に鈍くさいところ、変わってないわよね」

 レイナは文句を言いつつも、立ち上がってサイドボードに歩み寄る。メイドを呼ぶためのベルが、サイドボードの上に置かれているのだ。

(今だわ)
 
 レイナの視線が逸れたその隙に、フィーヌは自分とレイナのティーカップを入れ替えた。
 リーン、リーンとベルが鳴り、レイナが戻って来る。

「すぐに来るはずよ」
「ありがとう、レイナ。助かったわ」

 フィーヌはにこりと微笑む。

「この紅茶、美味しいのよ。是非飲んで」
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