拝啓、元婚約者様 捨てた私のことはお構いなく
「ええ、ありがとう。いただくわ」

 フィーヌは入れ替わった、元々レイナのものだったカップを手に取ると、それをゆっくりと飲んだ。
 レイナはじっとその様子を見守っていたが、フィーヌが紅茶を飲んだのを確認すると安心したように自分も紅茶を飲み始めた。レイナの白い喉が上下して、飲み物が喉を通過してゆく。
 
 コンコンとノックする音がして、メイドが新しいフォークをフィーヌに届けた。再びそのメイドが外に出たのを見送ってから、フィーヌはようやく口を開いた。
 
「そうそう、先日旦那様と一緒に遠出したの」
「遠出?」
「ええ。土の精霊にとってもおすすめだって教えられた秘密の場所があって、そこを視察しに行ったのよ。海が美しくて本当に素敵な場所なのよ。まだ殆ど誰にも知られていないけれど、リゾート地として開発する計画もあるらしいからいつかレイナも行ってみて。うちも別荘を建てようと思っているわ」
「へえ、そんな場所があるの。ちなみに場所はどこ?」
「知りたい? でも、どうしようかしら。秘密の場所だから」
 
 フィーヌは困ったように首を傾げる。
 その仕草は、レイナの知りたいという欲求に火を付けた。

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