拝啓、元婚約者様 捨てた私のことはお構いなく
 バナージは声をひそめ、ホークに囁く。

「俺たちは親戚であり、辺境伯家と公爵家というヴィットーレを代表する名家だ。お互いに協力しようじゃないか」

 ホークはしばらく黙り込んでから、おもむろに口を開いた。
 
「考えておこう」

 協力などするわけがない。フィーヌとホークは、ダイナー公爵家を敵と見なしているのだから。
 だが、それを教えてやる義理はない。
 勝手に転落していく様を見るのも、一興だ。

 
  ◇ ◇ ◇ 

   
 バナージの元に、不動産関連の大規模な競売にテーゼの土地も出されるという情報が入ったのは、フィーヌ達が帰宅した数日後のことだった。元々買おうとしていたシートも同じ競売で出品されていたので、情報を集めているうちに耳にしたのだ。
 
「レイナ。フィーヌが言っていたのは本当にテーゼで間違いないんだろうな?」

 バナージはレイナに念押しする。リゾート開発については熱心に調べていたつもりだったが、テーゼという地名は初耳だった。

「間違いないわ。土の精霊に言われたって」
「でも、あの日の晩、レイナは眠りこけてただろ? 聞き間違えってことはないか?」
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