拝啓、元婚約者様 捨てた私のことはお構いなく
「いいえ。ぐるっと回ってきたところです」
「そうか。なら、一緒に戻ろう。部屋まで送るよ」
「ありがとうございます」

 ホークはごく自然な所作でフィーヌから手綱を受け取ると、彼女と並んで歩き出す。

「先日ヴァルに地下水源の場所を教えてもらって、井戸を掘っただろう? 建設していた用水路の一部が完成した」
「本当ですか? では、今年の夏はきっと豊作ですね」
「ああ、そうだな」

 リリーを厩舎に戻すと、ホークはしげしげと彼女を眺めた。

「随分と大きくなったな。シェリーとよく似てきた」
「そうですね。美人さんです」

 フィーヌは笑顔で頷く。ホークはそんなフィーヌの様子を見つめ、優しく目を細めた。

「今度、一緒に用水路の工事状況を見に行かないか?」
「行きたいです!」

 フィーヌは目を輝かせる。
 忙しいホークと出かけられるのは、たとえ視察でも嬉しかった。

「よかった。あの用水路はフィーヌのおかげでできたようなものだから、是非見てほしかったんだ」
「わたくしのおかげだなんて」
「きみのおかげだろう? 水源を探して、工事費まで確保した」

 ホークはにやっと笑う。
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