拝啓、元婚約者様 捨てた私のことはお構いなく
 深夜、ホークは規則正しい寝息を立てて眠る新妻を窺う。
 部屋に差し込む月明かりの下で見るフィーヌは、昼間同様の美しさだ。閉じられた目は長いまつ毛に縁どられ、そのまつ毛は毛先がくるんとカールしている。
 ほっそりとしていながら豊かな胸も、力を入れれば折れてしまいそうな腰も、何もかもが美しい。
 
 ホークはベッドの上で体を起こす。すると肌寒かったのか、フィーヌは眠ったまますり寄ってきた。

「きみは猫みたいだな」

 ホークはくすっと笑う。
 本当は怖いくせに強がって威嚇してきて、そのくせ気まぐれにこうしてすり寄ってくる。

(二年か)

 二年間この生殺し状態が続くのかと思うと気が遠くなるが、軍人であるホークは人並み以上に忍耐力がある。
 なによりも、フィーヌが仕掛けてきたこの戦術が面白いと思った。

「では、二年かけてきみを俺から離れられなくして見せよう。どちらが勝つか、見ものだな」

 ホークはフィーヌの髪の毛をひと房掬い上げると、キスをした。

< 51 / 193 >

この作品をシェア

pagetop