拝啓、元婚約者様 捨てた私のことはお構いなく
(どうしてこの方を選んだのかしら?)
 
 正直意外だった。自分の息のかかった子爵令息や男爵令息などを脅して利用すると思っていたのに、全く無関係の、しかも辺境伯であるホークを仕向けるとは。
 
「失礼ですが、あなたはバナージ様とどこかで接点が?」
「王立学院時代、同窓だった。特に親しくはなかったが」
「そうでございますか」

 フィーヌは頷く。

(同窓だけれど特に親しくはないってことは、バナージ様がホーク様を一方的に敵視していたってところかしら……)

 敵視している理由は知らないが、おおかた〝剣の模擬戦で負けた〟もしくは〝同級生への態度を注意された〟あたりだろう。その場にいたかのように想像がつく。

「座って待つか」
「え?」
「そこのソファーがいいだろう」

 ホークが顎で指したのは、部屋の奥にあるソファーセットだった。ローテーブルを挟んでロングソファーふたつが向き合って置いてある。
 
 ホークがそこに座ったので、フィーヌもテーブルを挟んで反対側に座る。

「ところで、ドレスは直せたのか?」
「ドレスって?」
「後ろが乱れていたから直しに来たのだろう?」

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