拝啓、元婚約者様 捨てた私のことはお構いなく
 当たり前のように言われた言葉を聞き、ドキッとした。

(妻、か……。本命の女性がいるくせに)

 二年間という誓約の期間が終われば、フィーヌはここを去る。
 こんな軽口は聞き流せばいいだけなのに、なぜか胸がずきっと痛んだ。
 
  
 一行は予定通り、三時間ほどで目的の地域に到着した。
 フィーヌは辺りを見回す。ヴァルの力によって荒野ではないものの、一面に雑草が生い茂る荒れ放題の場所だ。
 
「きみが言っていたのは、この辺りだが」

 ホークに確認され、フィーヌは辺りを見回す。目印になるものもなく、どのあたりを掘ればいいのか確信が持てない。
 
「ヴァル!」

 フィーヌはヴァルに呼びかける。
 すると、「あいよ!」と元気な声がして地面からヴァルが現れた。

「ヴァルに前に教えてもらった鉄鉱石の鉱山って、場所はここで合ってる?」
「鉄鉱石の鉱山?」
「これよ」

 フィーヌはヴァルから貰った鉄鉱石を見せる。
 
「ああ、合ってるよ。掘るならもう少しあっちだな」

 ヴァルはフィーヌの後方を指さした。

「あの辺りだそうです」
 
 ヴァルの言葉を、フィーヌはホークに伝えた。

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