拝啓、元婚約者様 捨てた私のことはお構いなく
「新婚夫婦がふたりでお出かけするのです。デートじゃなかったらなんだっていうのですか」

 アンナがぷっくりと頬を膨らませたので、フィーヌはそれ以上否定するのをやめた。
 
 準備を終えて、エントランスホールへと向かう。既にホークはそこにおり、窓の外を眺めていた。

「閣下」

 フィーヌはホークに呼びかける。振り向いたホークと目が合った瞬間、彼の目が驚いたように見開かれた気がした。

「どうかしましたか?」

 フィーヌは不思議に思って首を傾げる。

「いや。いつもと雰囲気が違うから驚いただけだ」
「そうですか」

(綺麗だとは言ってくれないのね)

 内心ガッカリしてから、ハッとする。

(わたくしったら、何を考えているのかしら)

 ホークとは期間限定の夫婦関係なのだから、彼がそんなことを言ってくれるはずはないのに。

 馬車に乗って連れて行かれたのは、ロサイダー領では一番歴史のある宝飾品店だった。ホークがドアを開けてくれたので、フィーヌはおずおずと店内に入る。

「わあ……」

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