Mr.Phantom
アメの頭に、少し前にヨルが昼食を食べながら見ていた番組が浮かぶ。それは、理想の結婚相手を街を行く人にインタビューしたものだった。ある女性にインタビューをしたところ、「怪盗ファントム様です！」とその女性は答えたのだ。

『あんなに紳士的な人ですから、絶対一緒に暮らしたら幸せだと思うんですよね。ロマンチックな言葉を囁いてくれて、疲れてる時にはちょっと豪華な料理を作ってくれそうで〜』

頰を赤くしながら、理想というより妄想のようなものを語る女性のインタビューを見て、ヨルは「この人の気持ちわかるかも」と言っていた。

「怪盗ファントム様は絶対に優しいだろうし、幸せにしてくれそう」

その言葉に過去一番と言っていいほどアメは苛立った。

（俺は幸せにできないっていうのか！）

思い出すだけでも苛立ってしまう。その時だった。アメのデスクに置かれた電話が鳴り響く。アメは軽く息を吸い、怒りを飛ばしてから受話器を取る。

「はい。アメ探偵事務所です」

『アメさん！ちょっと捜査で協力してほしいことがあるんだよ〜』

電話の相手はアメの知り合いの刑事だ。よく捜査協力を頼まれる。しかし、刑事の声はいつになく落ち着きがなかった。
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