爆弾魔(♀)はご主人様に溺愛されています
自分に嫌悪感しかしないが、今の私にできることは何もなかった。
幼いころから愛を注がれず、洗脳され、手榴弾を作りながら実験台となり、自分と同じ被検体のために殺される。
なんて可哀想な生き様だろう。
私はもう15年生きているらしいが、実験台となるのはいつも年下だ。
役に立ちにくい少年少女から、容赦なく命を奪われていく。
「・・・はやく来ないかな」
あの魔導師を追ってきた、隣国の騎士が。
この施設を壊してほしい。
これ以上、自分のせいで死ぬ人間がいるのは、精神的に耐えられないのだ。
叶わないことを呟き、柄にもなく嘲笑すると、バンっとぼろい扉が開いた。
見張りをしている地方騎士が、慌てたように叫ぶ。
「毒!」
「・・・は」
毒──、それは、毒を呷って死ねという意味。
つまり、敵が入ってきたということだけど・・・。
もっとも重要な私も死ぬなんて、よっぽどのことらしい。
すぐに引き出しの中にある小さな瓶を取り出す。
緑色の不気味な液体を飲み干そうとしたとき、その瓶がバリン、と割れた。
それと同時に、中の毒も零れる。
「っえ」
ナイフだ。
ナイフが、飛んできて、ガラスが・・・。
バッと扉のほうを見ると、首から血を流し倒れる騎士と。
「っ!」
見たことのない、男。
一目で貴い身分だと分かる。
身なりは整えられていて、とても騎士には見えなかった。
帯剣しているとはいえ、その服装で剣をふるうことはできないだろう。
どこかの貴族の坊ちゃんか・・・肩書き集めに、戦えないのに先陣を切って行ったんだろうか。
「やぁ、はじめまして」
「・・・」
っあ、し、死ななければ・・・。
死ななければ、格の製造方法を吐くまで拷問される、と施設長に聞かされているのだ。
慌てて舌をかみ切ろうとすると、男は大股で近づいてきた。
そしてそのまま、ぐいっと顎を挙げさせられる。
「な、っなにを・・・」
なにをされるんだろう、くだらない人生だった、ともはや諦めかけ。
自業自得だと思てください、と男の手を噛み、素早く自分の舌も・・・。
「・・・ん、ぅ?」
痛みに覚悟しながら、開いた口を大きく閉じようとすると、それに割り込むように、口の中になにかが入った。
柔らかくて、熱くて、動いていて・・・動いていて?
こういうときでは、口に猿轡を噛ませたり、布を詰め込むんだそう。
でも、どちらにしろ動かないはずだ。
じゃあこれはなに?
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