それが例え偽りの愛だとしても
「もしよければ、俺の妻になってほしい。」

静かな声だった。

けれどその一言が、鼓膜を震わせて胸に届いた瞬間、心臓が高鳴って止まらなかった。

結婚——。
この人は、今まさに私に、それを申し出てくれている。

「……その、嫌だろうか。」

真人様が少しだけ眉を下げて尋ねたその顔が、ひどく優しくて、私はたまらなくなった。

「いいえ! そんなことありません!」

反射的に、私は勢いよく首を振っていた。

こんなにも素敵な人に、偽りだとしても“選ばれる”ということが、信じられなくて、

でも、嬉しくて、涙が出そうだった。

「私でよければ……喜んで。」

真人様が、微笑む。

その穏やかな笑みは、どこまでも柔らかくて、あたたかい。

「では、お話を進めますね。」

「……はい。」

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