それが例え偽りの愛だとしても
うまく言葉が出なかった。

でも、伝わってほしい。

この気持ちが、本当であることだけは——。

「次に会うのは、婚礼の日かな。」

真人様のその一言に、私は胸の奥でそっとつぶやいた。

(その日まで、私は——この偽りを、抱きしめ続けます。)

優しい笑顔が、私を包み込んだ。

嘘と知りながらも、私はその光の中に身を置いていた。

真人様に気に入っていただけた——

その事実が、私の心をほんの少しだけ軽くした。

私は“政略結婚”の駒ではない。

少なくとも、この人に“選ばれた”のだと。

……思いたかった。

そんなある日、本邸にいた私のもとへ、使用人が慌てた様子で駆け込んできた。

「沙奈様、大変です!」

「どうしたの?」

「矢井田様が——お見えです!」

「え……?」
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