それが例え偽りの愛だとしても
言葉を失った。

まだ婚礼の日取りには時間があるはず。

それなのに、なぜ今日、ここへ?

胸が高鳴る。

戸惑いと期待が、ないまぜになったまま、私は急いで玄関へ向かった。

「こんにちは。……遅くなって申し訳ございません。」

玄関先には、すらりとした姿の真人様が立っていた。

洋装のスーツ姿。

でもどこか、少しだけ表情に戸惑いの色が浮かんでいる。

「いえ、こちらこそ。……急に来てしまって。」

真人様は、少し照れたように頭をかいた。

その姿が、どこまでも自然で、優しかった。

「その……君に、会いたくなってしまって。」

真人様の低く落ち着いた声が、静かに部屋に響いた。

わ、わ、私に——⁉
思わず心の中で叫んでしまう。

真人様は、困ったように眉を下げる。

「それとも、迷惑だっただろうか。」

「そんな! 迷惑だなんて……!」
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