それが例え偽りの愛だとしても
お風呂に入り、身を清めた後、私は寝室へと案内された。

そこは、真人様の部屋だった。

広く整えられた和室の中央に布団が敷かれ、枕元にはぽつんと一つ、行燈の灯りが揺れている。

まるで、その灯りが私たちの今夜を祝福しているようだった。

――これから、初夜が始まる。

そう思っただけで、胸がどくん、と高鳴る。

真人様がそっと襖を開けて現れた。白の寝間着姿。

見慣れた着物姿とは違って、少しだけ無防備で、けれどもやはり整った顔立ちは変わらない。

彼は静かに私の前に座り、布団の端に腰を下ろした。

「不束者ですが、よろしくお願いいたします。」

私がそう頭を下げると、真人様は一瞬きょとんとしてから、小さく笑った。

「……ああ、こちらこそ。」

なんとなく――真人様の声が、震えているように思えた。
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