それが例え偽りの愛だとしても
“やっぱり、本物のお金持ちなんだ”

思わず、そう思った。

気圧されそうになる空気の中で、私はかろうじて礼を返す。

「……中林沙奈です。よろしくお願いいたします。」

けれど、胸の奥で何かがざわめいていた。

この人の隣に立つことが、本当に許されるのだろうか——と。

「これが、娘の沙奈です。羽奈の妹になります。」

父の声は、どこか誇らしげだった。

けれどその語り口は、まるで品評会で品を差し出す商人のようだった。

「どうですか? なかなかの器量よしでしょう。」

まるで、私は売られる品物。

けれどそれが、今の私に許された“存在価値”なのだと分かっていた。

真人様は、わずかに微笑んだ。

その端正な顔立ちに曇りはなく、声は低く穏やかだった。
< 6 / 62 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop