ガーネット
録音
あの日から2日、特にいじめられるようなこともなかった。
やっぱりバレてなかったのかも‥‥!
でもアカリの声は確かに大きかった。聞こえてないはずがない。
アカリ目立つタイプだからなぁ、怖いなぁ
今日もため息をつく。
あの後アカリに3-9で行われていたこと。会話内容を全て話した。ただ録画してたことを除いては。
ーーー
「そんなの絶対先生に言うべきだよ!!田中の名誉毀損だよそれ!犯罪じゃん!」
「わかってるよ。わかってる。でも怖いじゃん。私が次のターゲットにされたらさぁ。バレるかも知んないし、さっきのアカリのせいで。」
「だーかーらーそれは謝ってるじゃん!てか、そんなことがあったなんて知らないよ泣」
「まぁとにかく、真村先生に言うべき?なのかなぁ。」
「それが一番だよ。まー真村に言ったところであんま変わんなそうだけど笑」
ーーー
ごめん。アカリ。
あぁは言ったけど、言えないかも。
だって言えずに2日経ってる。
「はぁぁぁ〜〜〜。」
久々に先生の声聞こうかな。
撮り溜めておいた録音を一つずつ再生していく。
先生の癖、あくび、咳、雑談、独り言、時には誰かの愚痴、全部入ってる。
でも私しかそれを知らない。私だけの秘密。
先生の音を聞くたびに私は満たされる気がする私は変ですか?
録音を聞いていて思いつく。
そう言えば、田中先生は悠介先生と仲が良かったはず。
悠介先生にこのことを相談すれば‥‥‥
慌てて職員室へと向かう。
職員室のドアを勢いよく開ける。数人の先生が一瞬こっちを見たがすぐに手元の資料に視線を戻した。
私の目的の人は‥‥いた!
パソコンと睨めっこしてる。
先生の隣に駆け寄って小声で話す。
「悠介先生、廊下で少し話したいことがあります。」
先生は、んー?って言いながらも黙って廊下まで着いてきてくれた。
ーーー
「先生、私一昨日見たんです。」
何を?
「田中先生を嵌めた人がいるんです‥。」
うん。知ってるよ。
「証拠もあって、その時録画したから‥‥!」
録画にしたんだね。いつも俺を撮る時は録音なのになぁ。
‥‥‥邪魔者の声入れたくなかったんだ?
そうだよな。お前からしてみたら俺以外全員邪魔だもんな。
ねぇ。それ俺も同じだから。
全部、全部、知ってるけど、知らないフリをして答える。
「そっか、録画してくれたんだね‥。きっと強力な証拠になるから田中も嬉しいと思うよ。学校メールで先生に録画送ってくれない?あとは俺がやるから。」
カエデはすぐに「うん」とは言わない。
何が不満?
いじめられてる形跡は無かったはず。
ここ2日もアカリと仲良く話してるだけだっただろ。
それとも俺がタイピンをたまに変える事が不満なのか?
「‥‥‥どうした?カエデさん。なんか嫌なことでもあった?」
「あ、いや、廊下でデータ渡すのは誰に見られるか分かんないから、準備室でも良いですか?」
なんだ。そんなことか。
ーーー
物理準備室は余り綺麗じゃ無い。ホコリ臭いし変な木の匂いがする。
窓がボロボロのカーテンで覆われていて閉鎖的。
ギィィィバタンッ
密室に2人きり。
数分の沈黙の後、カエデが口を開く。
「先生、データ送りました。確認してください。」
送信ボタンを押す手は軽く震えていた。
「ありがとな。これ、カエデさん1人だったの?怖かったでしょ。」
お疲れ様。何かご褒美やらないとな。
確認のために再生ボタンを押す。
『‥‥‥愛してるよ、カエデ。』
そこに流れたのは一昨日の女子たちの声では無かった。
聞き覚えのある。教師の声。
一瞬で空気が変わる。
こいつ。わざと間違えたな。
「カエデさん。データ間違ってるよ。」
動揺の色一つ見せない。
先生。
でも、これ強力な証拠だよね?
「先生。これって先生の声ですよね?私、この間先生見かけたんです。
居酒屋から出てくるところ。塾が近くで、そしたらこんなこと言ってて先生?
前は知らないフリしてたけど、証拠の前じゃ意味ないね。それ。」
ニッコリ笑う。
いつも通りの笑顔。
嘘までついて、その時間カエデは家に居ただろ?確か、アカリから生物の課題の話が来て焦ってたっけ?
見え見えの嘘に俺は笑いそうになって、俯く。
「なあ、お前さ、“カエデ”って名前、他にもいるって考えなかったの?早く一昨日のデータ渡せよ。それともそれも嘘か?」
カエデは先生の予想外の反応に顔を真っ赤にして、慌ててスマホを操作する。
「っ‥嘘じゃないもん!!本当に撮ったもん!ほらっもっかい送ったから。見てよ!」
「お、本当だ。ありがとな。じゃ、鍵閉めるから早く出なよ。充分話したでしょ。」
カエデは出ようとしない。
また数分の沈黙のあと、カエデが不思議そうに口を開く。
「ねえ先生。もしこれ、間違えて誰かにバレちゃったら、先生ってどうなるのかな?」
やっぱりバレてなかったのかも‥‥!
でもアカリの声は確かに大きかった。聞こえてないはずがない。
アカリ目立つタイプだからなぁ、怖いなぁ
今日もため息をつく。
あの後アカリに3-9で行われていたこと。会話内容を全て話した。ただ録画してたことを除いては。
ーーー
「そんなの絶対先生に言うべきだよ!!田中の名誉毀損だよそれ!犯罪じゃん!」
「わかってるよ。わかってる。でも怖いじゃん。私が次のターゲットにされたらさぁ。バレるかも知んないし、さっきのアカリのせいで。」
「だーかーらーそれは謝ってるじゃん!てか、そんなことがあったなんて知らないよ泣」
「まぁとにかく、真村先生に言うべき?なのかなぁ。」
「それが一番だよ。まー真村に言ったところであんま変わんなそうだけど笑」
ーーー
ごめん。アカリ。
あぁは言ったけど、言えないかも。
だって言えずに2日経ってる。
「はぁぁぁ〜〜〜。」
久々に先生の声聞こうかな。
撮り溜めておいた録音を一つずつ再生していく。
先生の癖、あくび、咳、雑談、独り言、時には誰かの愚痴、全部入ってる。
でも私しかそれを知らない。私だけの秘密。
先生の音を聞くたびに私は満たされる気がする私は変ですか?
録音を聞いていて思いつく。
そう言えば、田中先生は悠介先生と仲が良かったはず。
悠介先生にこのことを相談すれば‥‥‥
慌てて職員室へと向かう。
職員室のドアを勢いよく開ける。数人の先生が一瞬こっちを見たがすぐに手元の資料に視線を戻した。
私の目的の人は‥‥いた!
パソコンと睨めっこしてる。
先生の隣に駆け寄って小声で話す。
「悠介先生、廊下で少し話したいことがあります。」
先生は、んー?って言いながらも黙って廊下まで着いてきてくれた。
ーーー
「先生、私一昨日見たんです。」
何を?
「田中先生を嵌めた人がいるんです‥。」
うん。知ってるよ。
「証拠もあって、その時録画したから‥‥!」
録画にしたんだね。いつも俺を撮る時は録音なのになぁ。
‥‥‥邪魔者の声入れたくなかったんだ?
そうだよな。お前からしてみたら俺以外全員邪魔だもんな。
ねぇ。それ俺も同じだから。
全部、全部、知ってるけど、知らないフリをして答える。
「そっか、録画してくれたんだね‥。きっと強力な証拠になるから田中も嬉しいと思うよ。学校メールで先生に録画送ってくれない?あとは俺がやるから。」
カエデはすぐに「うん」とは言わない。
何が不満?
いじめられてる形跡は無かったはず。
ここ2日もアカリと仲良く話してるだけだっただろ。
それとも俺がタイピンをたまに変える事が不満なのか?
「‥‥‥どうした?カエデさん。なんか嫌なことでもあった?」
「あ、いや、廊下でデータ渡すのは誰に見られるか分かんないから、準備室でも良いですか?」
なんだ。そんなことか。
ーーー
物理準備室は余り綺麗じゃ無い。ホコリ臭いし変な木の匂いがする。
窓がボロボロのカーテンで覆われていて閉鎖的。
ギィィィバタンッ
密室に2人きり。
数分の沈黙の後、カエデが口を開く。
「先生、データ送りました。確認してください。」
送信ボタンを押す手は軽く震えていた。
「ありがとな。これ、カエデさん1人だったの?怖かったでしょ。」
お疲れ様。何かご褒美やらないとな。
確認のために再生ボタンを押す。
『‥‥‥愛してるよ、カエデ。』
そこに流れたのは一昨日の女子たちの声では無かった。
聞き覚えのある。教師の声。
一瞬で空気が変わる。
こいつ。わざと間違えたな。
「カエデさん。データ間違ってるよ。」
動揺の色一つ見せない。
先生。
でも、これ強力な証拠だよね?
「先生。これって先生の声ですよね?私、この間先生見かけたんです。
居酒屋から出てくるところ。塾が近くで、そしたらこんなこと言ってて先生?
前は知らないフリしてたけど、証拠の前じゃ意味ないね。それ。」
ニッコリ笑う。
いつも通りの笑顔。
嘘までついて、その時間カエデは家に居ただろ?確か、アカリから生物の課題の話が来て焦ってたっけ?
見え見えの嘘に俺は笑いそうになって、俯く。
「なあ、お前さ、“カエデ”って名前、他にもいるって考えなかったの?早く一昨日のデータ渡せよ。それともそれも嘘か?」
カエデは先生の予想外の反応に顔を真っ赤にして、慌ててスマホを操作する。
「っ‥嘘じゃないもん!!本当に撮ったもん!ほらっもっかい送ったから。見てよ!」
「お、本当だ。ありがとな。じゃ、鍵閉めるから早く出なよ。充分話したでしょ。」
カエデは出ようとしない。
また数分の沈黙のあと、カエデが不思議そうに口を開く。
「ねえ先生。もしこれ、間違えて誰かにバレちゃったら、先生ってどうなるのかな?」