ガーネット
部活
部活の時間。
今日はアカリと雑談せずに、そのまままっすぐ部室に向かった。
――早く先生に会いたい。
何を話そうかな。うまく話せるかな。
勢いよくドアを開ける。
「こんにちは〜。……」
「こんにちはー!」
部活の子が返事をしてくれた。でも、私の目が探していた姿は、そこにはなかった。
……あれ? まだ来てないのか。早く来すぎちゃったかな?
もう少しだけ、アカリとしゃべってても良かったかも……。
ガラッ。
「やっほ〜」
入ってきたのは部長だった。明るくて、人当たりもよくて、部長らしい人だと思う。だけど――
「さっき悠介先生のとこ行ったら、今日はちょっと遅れるから先に始めといて〜、だって。前もそう言って来なかったよね、笑」
え、先生とそんなに近いの!?
まあ、部長だし、仕方ない。……けど、先生が来たとき、いつもずっと話してるじゃん。
私、入る隙ないじゃん……。
それからしばらく時間が過ぎて――
「こんにちは。もう始めてる?」
先生!
「あっ、先生遅いよ〜! もう始まって30分経ってるよ!? 今日は何? 生徒会?」
「いや? プリント印刷してたんだけど、コピー機の調子悪くてさ。時間かかっちゃった」
目の前で、先生が部員たちと話している。
こうして話しているところを見るの、なんだか久しぶりな気がする。
先生は、いつもの定位置――私の隣――に座った。
美術部といっても、ほとんど雑談しかしないから、先生もいつもノートパソコンを持ってきて、仕事をしている。
久しぶりすぎて、どう話しかけたらいいか分かんない……
焦ってスマホを取り出し、SNSを開くふりをする。何も見ていないくせに。
「ねぇ、これ、どんな感じにしたらいいかな?」
「……え?」
先生が、私に話しかけてくれた。
スケッチブックを差し出してきた。そこには手書きの文字で、こう書いてある。
――「9/27〆切 〇〇先生ウェルカムボード案」
〇〇先生……あ、小説家の人だ
「なんで、私……?」
「だって、去年その先生の本、読んでたでしょ? クラス課題で」
あ……そっか。去年の同じクラス、部活にはいないもんね
「確かに。読みました。私が読んだ作品は宇宙の話でした。だから、クレーターとか描くと“らしい”かもしれません」
「宇宙ねぇ……難しいなそれ笑 俺が今読んでるのは動物が出てくる話なんだけど、宇宙と動物って混ぜれなくない?」
「ふふっ、確かに。……その字、先生が書いたんですか?」
スケッチブックに視線を落とす。ちょっと丸っこくて、読みやすいけど、どこか拙い字。
「そうだけど?」
「へぇー……その、なんていうか……」
……汚い。読めなくはないけど、中学生女子みたいな字……
「――あっ! 汚いって思ったでしょ!? これ、本気じゃないから! 本気で書いたら俺、めっちゃ字うまいからね!?」
「いやいや、前も見たけど、大して変わってなかったですよ?」
そんな他愛もない会話。
でも、今はそれがとても嬉しい。
誰にも邪魔されない、先生との二人きりのやりとり。
――今が、一番幸せかもしれない。
今日はアカリと雑談せずに、そのまままっすぐ部室に向かった。
――早く先生に会いたい。
何を話そうかな。うまく話せるかな。
勢いよくドアを開ける。
「こんにちは〜。……」
「こんにちはー!」
部活の子が返事をしてくれた。でも、私の目が探していた姿は、そこにはなかった。
……あれ? まだ来てないのか。早く来すぎちゃったかな?
もう少しだけ、アカリとしゃべってても良かったかも……。
ガラッ。
「やっほ〜」
入ってきたのは部長だった。明るくて、人当たりもよくて、部長らしい人だと思う。だけど――
「さっき悠介先生のとこ行ったら、今日はちょっと遅れるから先に始めといて〜、だって。前もそう言って来なかったよね、笑」
え、先生とそんなに近いの!?
まあ、部長だし、仕方ない。……けど、先生が来たとき、いつもずっと話してるじゃん。
私、入る隙ないじゃん……。
それからしばらく時間が過ぎて――
「こんにちは。もう始めてる?」
先生!
「あっ、先生遅いよ〜! もう始まって30分経ってるよ!? 今日は何? 生徒会?」
「いや? プリント印刷してたんだけど、コピー機の調子悪くてさ。時間かかっちゃった」
目の前で、先生が部員たちと話している。
こうして話しているところを見るの、なんだか久しぶりな気がする。
先生は、いつもの定位置――私の隣――に座った。
美術部といっても、ほとんど雑談しかしないから、先生もいつもノートパソコンを持ってきて、仕事をしている。
久しぶりすぎて、どう話しかけたらいいか分かんない……
焦ってスマホを取り出し、SNSを開くふりをする。何も見ていないくせに。
「ねぇ、これ、どんな感じにしたらいいかな?」
「……え?」
先生が、私に話しかけてくれた。
スケッチブックを差し出してきた。そこには手書きの文字で、こう書いてある。
――「9/27〆切 〇〇先生ウェルカムボード案」
〇〇先生……あ、小説家の人だ
「なんで、私……?」
「だって、去年その先生の本、読んでたでしょ? クラス課題で」
あ……そっか。去年の同じクラス、部活にはいないもんね
「確かに。読みました。私が読んだ作品は宇宙の話でした。だから、クレーターとか描くと“らしい”かもしれません」
「宇宙ねぇ……難しいなそれ笑 俺が今読んでるのは動物が出てくる話なんだけど、宇宙と動物って混ぜれなくない?」
「ふふっ、確かに。……その字、先生が書いたんですか?」
スケッチブックに視線を落とす。ちょっと丸っこくて、読みやすいけど、どこか拙い字。
「そうだけど?」
「へぇー……その、なんていうか……」
……汚い。読めなくはないけど、中学生女子みたいな字……
「――あっ! 汚いって思ったでしょ!? これ、本気じゃないから! 本気で書いたら俺、めっちゃ字うまいからね!?」
「いやいや、前も見たけど、大して変わってなかったですよ?」
そんな他愛もない会話。
でも、今はそれがとても嬉しい。
誰にも邪魔されない、先生との二人きりのやりとり。
――今が、一番幸せかもしれない。