嘘から始まるメロディ

嘘から始まるメロディ

きらびやかな照明がステージを照らし、無数のペンライトが波のように揺れている。私は、その光景を舞台袖から見つめていた。
数年前、私は小さな嘘をついた。紅音に近づきたくて、ただそれだけの理由で。
私は紅音の才能に惹かれ、紅音のことをもっと知りたかった。でも、普通のファンとして近づく勇気はなかった。だから、私は嘘をついた。私は音楽関係者だと。
嘘は雪だるま式に膨らみ、いつしか取り繕えないほど大きくなっていた。それでも、紅音との時間は私にとってかけがえのないものだった。
紅羽
「ねえ、今日のライブも最高だったよ」
紅音
「そうか、ありがとう」
紅音はいつも優しかった。私の拙い音楽知識にも真剣に耳を傾け、意見を求めてくれた。その度に、罪悪感が胸を締め付けた。
紅音
「最近、少し元気がないみたいだけど、何かあった?」
紅羽
(どうしよう…..。嘘がバレるかもしれない)
紅羽
「ううん、何でもないよ。少し疲れてるだけ」
紅音
「無理しないで。紅羽はいつも頑張りすぎだよ」
紅音の言葉が、ナイフのように私の心を抉った。嘘をついている自分が、ひどく惨めに思えた。
ライブが終わり、楽屋に戻ると、紅音は真剣な顔で私を見つめていた。
紅音
「実はずっと前から気づいていたんだ」
紅羽
(やっぱり、バレていたんだ)
紅音
「紅羽が音楽関係者じゃないこと」
私は息を呑んだ。言い訳をすることもできず、ただ紅音の言葉を待った。
紅音
「でも、紅羽が私の音楽を真剣に聴いてくれていることは伝わっていた。嘘から始まった関係だったとしても、紅羽と話す時間は私にとって大切なものだった」
紅音の言葉に、私は驚きを隠せなかった。責められると思っていたのに、紅音は私の気持ちを理解しようとしてくれていた。
紅羽
「ごめんなさい……。全部、嘘なの。紅音のことが好きで、ただ近づきたかっただけなの」
俯く私に、紅音は優しく微笑みかけた。
紅音
「知っていたよ」
紅羽
「え……?」
紅音
「でも、いいんだ。紅羽の気持ちが嬉しいから」
私は顔を上げた。紅音の瞳には、嘘備りのない優しさが宿っていた。
紅羽
「ありがとう……」
紅音との間に、静かな時間が流れた。嘘から始まった関係は、今、新たな局面を迎えようとしていた。
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