音のない世界で私の耳になってくれた君は
「電車に乗るよ。」
『うん』
音は聞こえないけれど口の動きで何が言いたいのかがわかった。
「カード持ってる?切符買う?」
『カード持ってるよ』
『わかった。俺も持ってるから行くか』
私たちは電車に乗った。
『人が多いね』
『今、出勤時間だからね』
なんか狭い。
『こっち側来て』
『え?こっち?』
“ドンッ”
急に壮良の手が電車のドアについた。
へ…?
これって壁ドン?
生まれて初めて…なんだけど…
『ごめん、この体勢から身動きとれない』
『全然大丈夫!』
…いつまで続くんだろ?
それから10分くらい経った。
『着いたよ。降りよっか』
『そだね!』