ほろ甘シェアルーム

 ◇

 「ただいま……」

 今週の6連勤は、ほんと疲れた。早く、冷蔵庫で冷やしてあるビールを一気飲みしたい。

 ふらふらしながら703号室のドアを開けると、玄関に見慣れない靴が2足並んでいた。

 女性用のサンダルと、男性用のスニーカー。もしかして、あゆか達が遊びに来たのかな……? 

 1ヶ月前まで、この部屋でルームシェアしていた同居人の顔を思い浮かべたら、6連勤の疲れが一気に吹っ飛んだ。

 来るなら、事前に連絡くれたらいいのに。

 こんなことなら、帰りにコンビニでお酒のつまみでも買ってきたらよかったな。ウキウキした気持ちで、リビングのドアを開ける。

 「あゆか、ホタル、いらっしゃ――」

 満面の笑みを浮かべたあたしの頬が、ピクリと引き攣る。

 それもそのはずだ。リビングのドアを開けた瞬間、あたしの目に飛び込んできたのは、ソファーの上でキスしながら絡み合っている見知らぬ男女の姿だったから。

 ドアノブをつかんだまま、リビングの入り口で凍り付いていると、それに気付いた男がこちらを流し目で見て、「やべ。聞いてたよりも早いじゃん」と、煩わしげにつぶやいた。

 「(じゅん)くん?」

 男の膝の上に乗っていた女が、熱っぽい目で彼を見上げて首を傾げる。

 男はそんな彼女の頬を優しく撫でてやりながら、あたしに見せつけるみたいに、堂々と彼女にキスをした。たぶん、フツーに舌も入ってた。

 何、この子――? そう思っていると、男が彼女を抱き上げて立たせる。
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