恋ひわずらふ帝~御簾の奥、ただ君を想う~
「帝にとっては、雑仕女など……ありきたりなもの。名など、すぐに忘れてしまわれる。」

風がまた、衣を揺らした。

私は何も言えなかった。ただ黙って、空を見上げた。

この想いは、きっと誰にも知られないまま、風に溶けていくのだろう。

「のう、春野。」

「はい。」

百合様は、私の髪をそっと撫でながら言った。

「また帝が、そなたの前に現れることがあっても……顔を見せてはなりませんよ。」

私は、ふと首を傾げた。

「……なぜ、でしょうか。」

「そなたは、美しい顔をしている。帝が興味を持たぬとも限らぬ。」

そんな――ことが、あっていいのだろうか。

「でもね、春野。その恋は……叶わぬのです。」

百合様は、まるで自分に言い聞かせるようにゆっくりと言った。

「帝のお相手を務めるのは、選ばれた身分高き姫君。そなたのような身では……」

「……はい。」

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