恋ひわずらふ帝~御簾の奥、ただ君を想う~
「そなた、雑仕女にしては――美しいのう。」

中宮様の言葉が、鋭い刃のように突き刺さる。

怖い。声が、視線が――怖い。

「誰ぞの娘か。」

「……はい。清原實兼(きよはらのさねかね)の娘でございます。」

やっとの思いで名を口にする。

まるで問い詰められているような、胸のざわめきが止まらなかった。

「そうか、清原實兼の娘か。」

中宮様は、どこまで知っておられるのだろうか。

ただの名ばかりの父――私を一度も振り返らなかった人の名を。

「覚えておこう。」

淡々と告げられたその言葉に、私は深く頭を垂れた。

帝と中宮様が、ゆるりと房へと戻っていかれるのを感じ、私はようやくほっと息をついた――その時だった。

ふと、視線を感じた。

目を上げると、帝が振り返っていた。
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