恋ひわずらふ帝~御簾の奥、ただ君を想う~
政の都合。
この国の未来を担う帝にとって、結ばれる相手を選ぶ自由などない。

その現実が、胸にじくりと染みてくる。

――そして私などは、最初から蚊帳の外。

私は侍女。帝を見つめてはいけない身。

それでも、帝は私に目を向ける。

まるで、心のどこかで名残惜しんでいるかのように。

中宮様の横に座す帝と、掃き掃除をしている私。

本来なら、交わるはずのない場所にいるふたり。

けれど、その視線だけが、静かに、確かに交差していた――。

それから中宮様は、私に厳しく当たるようになった。

「春野。そなたは何か特技があるか?」

「えっ……」

「何でもよい。帝の気を引くものであれば。」

「ひとつ言うのなら、文字を書けるぐらいしかございません。」

そう答えると、中宮様は手に持った扇子で小さく机を叩いた。
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