恋ひわずらふ帝~御簾の奥、ただ君を想う~
そして中宮様の意を汲んでか、帝はその夜、中宮様を清涼殿に召された。

私はその付き添いとして、灯りを掲げてお供する。

静けさの中、歩を進めた先に見えたのは、薄闇に浮かぶ白寝着の帝。

静かに身を起こし、中宮様の名を呼ばれる。

「清姫か。」

「はい。」

そのたった二言で、空気が変わった。

中宮様が帝の影と寄り添った時、灯りがふっと掻き消された。

「春野。行くぞ。」

百合様が私の袖を引く。

でも、足がすくんで動けなかった。

見てはならぬ、近すぎる帝の姿。

あの香、あの声。

もう戻れないところまで来てしまった気がした。

そして、吐息が聞こえた。

女の、悦びを含んだ吐息。

帝が中宮様を抱いているのだ。

あの夜、雨に濡れて私に名を尋ねた、あの方が。
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