恋ひわずらふ帝~御簾の奥、ただ君を想う~
「相手は帝。高御座に座す、この世にただ一人の御方じゃ。忘れるのが、そなたの為ぞ。」

それでも、私は何も言えなかった。

忘れねばならないと分かっていても、はいとは言えなかった。

愚かで、浅はかで……でも、それでも――帝が好きだった。

それから私は、なるべく帝のお渡りの時には姿を隠すようになった。

屏風の影、簾の向こう、柱の陰――顔を見られぬように、気配さえも消して。

けれど帝は、私を探すようになった。

「春野はどうした?」

その声に、胸がざわめく。

「さて、どこぞにいるか。」

中宮様はそ知らぬ顔で答える。

私を敢えて呼ぼうとはなさらなかった。

もし帝が私に興味を抱けば、それは中宮様の立場を脅かすことにもなりかねない。

だから、私の存在はなかったことにされていく。

「任を解かれたのか?」
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