恋ひわずらふ帝~御簾の奥、ただ君を想う~
私は、帝の目を真っ直ぐに見つめた。

深い湖の底のようなその瞳が、わずかに揺れた気がした。

帝は、何かを察したのか、そっと日記を再び手に取る。

「——そなたの御手、美しいものだった。」

胸がドキリと跳ねた。

御手、つまり筆跡のことだ。

「このような美しい文字を書けるそなたは……心まで美しいのだと思ったよ。」

静かに紡がれる言葉が、胸の奥まで沁み込んでいく。

そして帝は、ためらいもなく私の頬に手を添えた。

温もりがじんわりと広がる。

「誰ぞ好きな者がいるか尋ねたのは——少しだけ嫉妬したからだ。許せ。」

その一言が、全身を包むように響く。

帝の手の温かさに、このまま身を委ねてしまいそうだった。

そして帝は立ち上がると、この小さな房を後にした。

それを見送るだけで、私は精一杯だった。
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