恋ひわずらふ帝~御簾の奥、ただ君を想う~
庭での会話を終え、房に戻っても、帝の温かな手の感触が頬に残っていた。

あの方の真っ直ぐな眼差し、そして「少し嫉妬した」という言葉が、何度も胸の内で反響する。

「春野。」

ふいに戸口から百合の声がした。

「帝からのお言伝です。」

百合は恭しく、細長い巻紙を差し出す。

広げると、そこには流麗な筆致の和歌があった。

「恋しとは 思わざりきに 落ちにけり
  誰をか思ふ 春野なる君」

——恋などするとは思ってもいなかった。
けれど気づけば、もう恋に落ちていた。
思い浮かぶのは、春野という名の、君……おまえだけだ。

読み終えた瞬間、胸がきゅうと締め付けられる。

——まさか、この和歌が私に向けられたものだとは。

指先が震えて、巻紙を胸に抱きしめた。

「どうしたら、いいのでしょう。」

和紙に記された帝の和歌を胸に抱きしめ、私は百合様に尋ねた。

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