恋ひわずらふ帝~御簾の奥、ただ君を想う~
「春野の気持ちを、そのままお伝えすればよい。」

静かに返された言葉は、私の心に沁み入るようだった。

「……恋とは、不思議なものですね。」

自分でも驚くほど、声がかすれていた。

「勝手に叶わないと思い込んでいたのに……気づけば相手も、同じ気持ちになっている。」

百合様はそっと視線を落とし、私の胸に抱かれた巻紙に目をやった。

「このような真っ直ぐな帝をご覧になったのは、初めてよ。」

その瞳は、遠い記憶を思い返すように細められている。

私は返す言葉を失い、ただ和歌の一文字一文字を指先でなぞった。

墨の黒が、まるで帝の体温のように熱く感じられた。

「春野は帝をどう思っている?」

百合様の静かな問いかけに、胸の奥がじんわりと温かくなった。

「お慕いしております。……誰よりも強い心で。」

言葉にした途端、頬が熱を帯びる。
< 36 / 44 >

この作品をシェア

pagetop